就業規則で『副業禁止』にできる? 記載なしの場合のデメリットとは?
2022.06.04
こんにちは!起業サポ 社会保険労務士の大石です。
会社経営者や起業家のみなさんは、自社の副業ルールについて、考えたことはありますでしょうか?
2018年から働き方改革の流れを受け、副業解禁が推奨されるようになりました。
その一方で、副業がきっかけとなって、雇用主と労働者のトラブルが跡を絶たない状況となっています。
そのため、副業に関する“社内ルール”を整備しておかなければなりません。
そこで今回は、『就業規則』×『副業』をテーマにお話をしていきます!
就業規則に副業についての記載なし…その場合はどうなる?
ここではまず、就業規則と副業に関する基本的な知識を確認していきます。
原則、副業することは可能になる
就業規則への副業に関する記載をなしとする場合は、労働者は副業をすることができます。
就業規則は、労働者が会社に働く上でのルールです。
“副業を禁止にする旨”の記載をなしとする場合は、懲戒処分などの罰則を会社は与えることはできません。
会社のルールで決められていないからこそ、労働者は副業を自由に行うことができます。つまり、記載なしのままでいることは、会社にとってデメリットが大きいということです。
副業の内容次第で、就業規則に記載なしでも禁止にできる
しかし、ここで注意していただきたいのは、すべての副業ができる訳ではないということです。
安全配慮義務や秘密保持義務、また競業避止義務などの視点から、副業として相応しくないものであると判断されれば、禁止となるケースもあります。
これは簡単にいえば、
- 労働者の生命や身体を害するおそれのある場合
- 会社の利益に損害を与える場合
は副業を禁止にできるということです。
ただし、これらの例に該当するからといっても、全面的に副業を禁止にできる訳ではないので注意しましょう。
副業禁止にしたいなら、就業規則に記載をしよう
副業について、雇用主と労働者間でのトラブルは起こしたくはありませんよね?
であれば、就業規則に明確な形でルール化することをおすすめします。
就業規則にルールを明記することで、労働者が違反した場合の対応や会社としての姿勢を示すことが可能です。副業に関するトラブルを抑えるための根本的な解決方法と言えるでしょう。
就業規則にどう記載すれば、副業禁止にできるの?
では、就業規則にはどのように記載すれば『副業禁止』にできるのでしょうか?
ここでは、副業禁止にする場合の就業規則の記載例や注意点を確認していきます。
基本、副業は全面的に禁止にすることはできない
先ほども少し解説していますが、就業規則に記載したとしても副業を全面的に禁止にできる訳ではありません。
というのも、「副業を全面的に禁止する」と言うことは、労働者のプライベートの時間までを拘束してしまうことになります。
いくら雇用主と言えども、労働者のプライベートの時間までを拘束することはできません。
また、『副業解禁』にもあるように、副業の解禁自体は政府からも要請されています。
そのため、副業を全面的に禁止することは、会社自体のイメージを下げかねないので慎重に判断が必要だと言えるでしょう。
副業禁止の就業規則の記載例を紹介!
では、『副業禁止』について、就業規則にどのように記載すべきかを解説します。
以下は、先ほどまでの解説をふまえ、全面的な禁止ではなく、『許可制』とした場合の記載例です。
第◯条
労働者は、勤務時間外において、許可なく他の会社等の業務に従事してはならない。
第◯条
労働者が次の各号のいずれかに該当する場合は、懲戒処分とする。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
引用: 厚生労働省『モデル就業規則について』の『全体版』
こちらは一例となりますので、実際に作成される際は、社会保険労務士等の専門の方とご一緒に作成してくださいね。
副業の許可は申請書兼誓約書を使用!
先ほどの記載例にあるように、副業を許可制とした場合に、『申請書兼誓約書』を使用することをおすすめします。
申請書兼誓約書というのは、従業員が会社宛に副業の許可を申し出たり、その内容を会社に報告したり、副業が会社の規定に違反しないこと約束するという効力を持つものです。
副業を許可するにあたり、労働者の利益相反行為や労働時間等でトラブルとなった例が跡を絶ちません。これは会社側が、副業の業務内容や労働時間等の実態を把握していないことが原因でもあります。
このようなトラブルを未然に防ぐ意味でも、申請書兼誓約書を活用して、労働者の副業の管理はしっかりと行ってください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、副業に関する就業規則の定め方について、記載例を交えて解説しました。
時代の流れからも、今後も『副業』に関するルールを整備していくことは、どの会社にも求められていくことでしょう。
副業についての記載をなしとしてしまうと、副業をしている従業員とのトラブルがあった際に、対応できなくなってしまいます。
会社経営者や起業家のみなさんは、時代の流れに敏感になり、労働者の副業ルールについても考えておくことをおすすめします。
会社の最大の資本とも言える『労働者』を大切にし、より大きくみなさんの事業を拡大していきましょう!
社会保険労務士大石 諒
リスク予防型の就業規則作成が得意です。起業時にはネットで探した就業規則を利用するのも一つの手ですが、その就業規則等で労使トラブルが発生した場合に会社を守れますか?御社の実態に沿ったオーダーメイドのリスク予防型の就業規則は、未払い残業問題等のあらゆるリスク回避を実現します。