【ダブルワーク&副業】労災保険の加入は必要? 休業補償はいくら?
2022.05.08
こんにちは!起業サポ 社会保険労務士の大石です。
会社経営者や起業家のみなさんは、ダブルワークや副業における労災保険のルールについてはご存知でしょうか?
もしあなたの事業所でダブルワークのスタッフに労災が起こったとき、どのような責任があるか?どのくらいの補償が受けられるか?答えられますか?
労災保険は、労働者が1人でもいれば加入が義務付けられています。
そのため、社長や起業家のみなさんにとって必須の知識です。
副業解禁の流れから、2020年9月、副業している方向けの労災保険に関するルールが改正されました。
そこで今回は、ダブルワークや副業の労災保険についてのルールを解説していきます!
そもそもダブルワークや副業で労災保険の加入は必要?
労災保険とは、業務上の事由や通勤中に発生した事故によって、労働者がケガや病気等を負った場合に適用される制度です。
みなさんの事業の中で1人でも労働者を雇用した場合には、加入が義務付けられます。
そして、これは労働者がダブルワークや副業であっても、同じです。
あくまで加入の対象となるのは、『雇用主』であるため、労働者がダブルワークや副業を行っていても、労災に加入しなければなりません。
つまり、片方の雇用先が加入していれば、もう一方は加入の責任はない。というわけではないということです。
この点は、勘違いしないようにしましょう。
ダブルワークや副業等の副業に関する労災保険のルールが変更!
冒頭にもあるように、この労災保険のルールが2020年9月に変更しました。
『副業解禁』の流れに伴い、副業に関連する内容が変更となっています。
具体的には、次の2つです。
- 労災の休業(補償)等給付の給付額が変更
- 労災認定の評価基準が変更
とくにトラブルになりやすい点であるため、このあたりの変更点はおさえておきましょう。
1.ダブルワークや副業に対する労災の休業(補償)等給付額とは?
1つ目の改正点は、副業をしている人に対する労災の休業(補償)等給付額です。
これは、「すべての賃金額の合算額を基礎として給付額を決定する」という内容に変更となりました。
次からは、従来の制度と法改正後の制度と確認していきましょう。
【従来】労災事故が発生した労働先のみで給付額を決定
副業をしている人に対する休業(補償)等給付額については、従来、労災事故が発生した労働先のみで給付額を決定していました。
たとえば、次のような場合において、会社Bのみの賃金を基礎して給付額を決定しています。
- 会社A:30万円/月
- 会社B:15万円/月
当然ではありますが、会社Bの賃金である“15万円/月”を基礎とします。
【法改正】すべての労働先で給付額を決定
従来の決定方法では『副業解禁』を踏まえた柔軟な働き方を推進する弊害になる可能性があるとし、法改正が行われました。
具体的には、「すべての賃金額の合算額を基礎として給付額を決定する」、といった内容です。
たとえば、先ほどの例で言えば、会社Aと会社Bの賃金を合算した“45万円/月”を基礎とすることになります。
- 会社A:30万円/月
- 会社B:15万円/月
そのため、労働者の立場から考えれば、従来の制度内容よりも多くの給付を受けることが可能です。
2.ダブルワークや副業に対する労災認定のルールとは?
2つ目の改正点は、副業をしている人に対する労災認定の評価基準です。
精神疾患等を対象とし、「すべての労働先で総合的に評価して判定する」、という内容に変更となりました。
こちらも、従来の制度と法改正後の制度と確認していきましょう。
【従来】労災認定の要素をそれぞれの労働先を個別に評価して判定
従来の制度であれば、労災認定の要素は、それぞれの労働先を個別に評価して判定していました。
次の例で考えてみましょう。
- 会社A:7時間/日の労働
- 会社B:5時間/日の労働
従来の場合であれば、会社Aと会社Bのそれぞれの労働先で個別に評価します。
この例で言えば、認定されない可能性もあります。
【法改正】労災認定の要素をすべての労働先で総合的に評価して判定
そこで法改正では、「すべての労働先で総合的に評価して判定する」、という内容に変更となりました。
先ほどの例で言えば、「労働時間が12時間あったことによって、精神疾症が発症したのではないか?」というような評価となり、労災認定を判定します。
この法改正の内容は、労働時間だけではありません。
それぞれの業務実態も踏まえて総合的に評価していくような変更となりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、副業に関する労災保険のルールについて、解説しました。
今回の内容をおさらいすると
- 労災の休業(補償)等給付の給付額が変更
- 労災認定の評価基準が変更
となります。
どちらも雇用者としては、知らないだけでは許されないルールです。
労働者とのトラブルにならないように責任を持ち、あらかじめ会社内で労働者の副業ルールについて、考えておくのも大切となります。
ぜひ、労災に関する知識を身につけ、活動の幅を広げてくださいね!
社会保険労務士大石 諒
リスク予防型の就業規則作成が得意です。起業時にはネットで探した就業規則を利用するのも一つの手ですが、その就業規則等で労使トラブルが発生した場合に会社を守れますか?御社の実態に沿ったオーダーメイドのリスク予防型の就業規則は、未払い残業問題等のあらゆるリスク回避を実現します。